作業所(その2)

作業所(その2)

『あるむの詩』№31(2001.07)より

 この間、市作連内作業所のうち、「連合会」を運営主体とする七作業所に、「インディーズ(笑)」のあるむが参加し、 「作業所のあり方と今後」について討議を行ってきました。 この「あり方研究会」(?)の発足は二〇〇三年(いわゆる「平成十五年問題)に「措置から契約へ」ということで、 「措置制度」が「支援費制度」に転換することに大きく、影響されています。またそれとは相対的に区別されてはいますが、 法外組織である作業所の「法内化」(法人化)問題が新たに社会福祉基礎構造改革の一環として打ち出されてきたことも関連しています。
 そして、第三にこうした障害福祉・作業所をとりまく情勢の大きな変化に対応して、大和市における作業所のあり方をめぐり、 行政の側から「今後の展望についてどう考えるのか」とボールが投げかけられました。

 第一の問題から見てみましょう。措置費から支援費へという「制度改革」は、 法人施設ではない「行政のスキマ」(「福祉のスキマ」という言い方は間違いでした。訂正します。)に存在する作業所=法外組織にとって、 直接には関係がありません。厚生労働省の「支援費制度Q&A集」では「小規模通所授産施設(作業所などのことです)でのサービスや… 措置以外の仕組みによって提供されるサービスは、支援費制度に移行しない」と明言しています。 ですから、この制度は作業所に適用されることはありませんが、 「措置」から「契約」への転換(「行政処分」から「行政サービス」へ)はそれ自体好ましいことです。 そもそも作業所は「行政サービス」としての補助金によって支えられ、作業所への入所は「契約」以外のなにものでもありません。 ただ、将来的な問題を考えれば、作業所にも、今回の「支援費制度」がそのまま導入されることはないまでも、 何らかの制度的転換(改革?)がありえると思います。

 これが第二の問題としての「小規模社会福祉法人」の制度化(いわば、従来の社会福祉法人の大巾な規制緩和)と 連動していることは明らかでしょう。前にも書きましたが、作業所は「法外組織」でありながら、 全国五〇〇〇ヶ所とも六〇〇〇ヶ所とも云われるように、障害福祉にとって重要な位置と役割を占めるようになりました。 かつては「在宅福祉」の延長として「社会福祉事業法第二条第三項第三号に規定する更生相談及びそれに付随する事業の一つ」 (いかにも福祉の片隅にあることを感じさせますね)でしかなかった作業所は、今や「小規模通所授産施設」という立派な(?)名前を付けて貰いました。

 厚生労働省は、五年間で一〇〇〇ヶ所の小規模法人を目指し、将来的には、すべての作業所を「法人化する」と明言したそうです。 (日身連研修会01、2、2メモより)もちろん、現在の「補助金制度はそのまま」、つまり「支援費制度へは転換しない」ことも付け加えたそうです。 しかし、「補助金制度」は不安定な制度です。ですから、こうした流れに「浮き足だつ」こともむべなるかな、と思います。

 これに対して、県障作連は二〇〇一年一月に発行した「実態調査報告書」の「あとがき」でこの「小規模法人」の朝日新聞による 「任意団体のまま活動をおこなっていくと『公益のために活動している』と認知されにくいから社会福祉法人になる道をひらくことにした」という報道について、 「…(法人)にならなければ『公益のために活動している』と認めにくいとする考え方そのものに一考を要したい」とキッパリ言い切っています。

さて、ここで第三の問題に行く前に「作業所のあり方」について考えてみたいと思います。 それは、「大和市」という限られた地域の中では極めて「特異な」(?)存在である「あるむ」についての総括でもあります。 それは、あるむの歴史が教えているように、最初は「共働作業所あるむ印刷工房」として出発したことに大きく規定されています。 いわば有償ボランティアと障害者も働いている、全く生産性の低い「印刷屋」ですが、 あるむの理念(といえるほど大げさなものではありませんが)である「働くこと、自分の力で働いてお金を得て生活してゆく、 そんな当たり前のことを障害をもつ仲間と力を合わせてやってゆく」を実現していくための作業所でした。

当時は、ノーマライゼーションもバリアフリーも「それ!なんのこと?」という時代でした。知的障害を精薄と呼び、 愛護協会というのもありました。「職員を先生と呼ばない」「ちゃん付けで利用者(こんな言葉もありませんでした。 「園生」とか呼んでいたところもあります。)を呼ばない」などということが大真面目で語られた時代でした。 ですから、あるむの「理念」や運営方法はそれ自体既成の福祉に対するアンチ・テーゼでもあったようです。 でも、時代は大きく変わったのも確かです。「理念」などと、肩に力を入れていた時代は終ったとも言えます。 (エラソーに言えば、あるむは時代に追いつかれました。)

 まだまだ「業界用語」でしかありませんが、現在作業所は「小規模通所授産施設」として厚生労働省によって 障害者福祉の重要な位置と役割を与えられました。一九九七年に大和市が発表した「障害福祉計画・やまとハートフルプラン」に 「就労の促進」という項目があります。その中の「取り組みの方向」の四番目に「地域作業所の整備・充実/福祉的就労の場である 地域作業所の整備、充実を図ります。」という一文が記されています。(一二〇頁にわたる計画の中で、作業所にふれているのは、これだけですが…。)

 あるむは「仕事」にこだわっています。そして前にも書きましたが、障害をもつ仲間こそ「職業選択の自由」に恵まれたいものだと思っています。 その意味ではあるむはたまたま「印刷」をやっていますが、もっともっといろんな「仕事」をやる作業所がふえれば、選択肢がふえ、 それこそ「豊かな職業生活」を送れるでしょう。もちろん、重度の仲間を受け入れることで「作業にこだわらない作業所」も必要です。 厚労省はそうした作業所を「小規模通所更生施設」と名付けているそうですが、 いずれにせよ「多様なサービス」は作業所だからこそできるような気がする今日この頃です。