作業所(その1)  『あるむの詩』29(2000.09)より

 すったもんだの末、2000年4月より介護保険制度が導入されました。 (まだまだ、すったもんだは続いていますが。)これと連動して「社会福祉基礎構造改革」が進められ、 「社会福祉事業法」が「社会福祉法」と改称、作業所をとりまく環境も激変しつつあります。 少子高齢社会の到来に対して、抜本的な制度改革の必要に迫られてきた、ということでしょう。 一方では、右肩上りの成長経済の時代は終り、他方、福祉は、ヒト・モノ・カネと社会のあらゆる問題とリンクしながら、 改善、改良に向け前進して来たことを踏まえ後退は許されない状況も生まれています。

 こうして、まず高齢者介護問題がクローズアップされました。ここで介護保険についての論評はしませんが、 税ではなく保険で!という保険制度の創設のキーワードとして「自助努力」が根幹にあるようです。 これは、もちろん「福祉の後退」であってはならないので、当然にも「福祉」概念そのものの見直しと結びついていなければ論理上、 一貫しません。そこで語られるのが「福祉の原点」です。

 さて、それでは「福祉の原点」というのは何でしょう。行政・厚生省は「生活保護」をさしているようです。 憲法25条の「文化的生活権」です。「福祉の原点」として生活保護を据え、これを国の義務的施策とし、 それ以外は「自助努力」を基礎とする保険制度として再編確立する。 私の理解では、どうもそのようです。こうして、「自助努力」と並んで「自己決定」なるものが声高に叫ばれ、 「福祉」は「恩恵」ではなく、「サービス」であり、「措置」から「契約」へと移行しつつあります。
 こうした流れの中で、作業所はどうなるのでしょう。

 法・制度的に考えれば、作業所は「法外」組織として出発し、各自治体の施策の中で、徐々に整備されてきました。 (社会福祉事業法第二条第三項第三号に規定する更生相談及びそれに付随する事業の一つとして位置づけられている。) 現在、各都道府県が市町村と協力し、「障害者地域作業指導事業」として、それぞれ「実施要綱」を作成しています。 こうして、補助金が作業所に交付されるわけですが、各自治体の施策(意向?考え方?)に左右されることになります。 幸いなことに大和市は障害者福祉に理解があり、前にも書きましたが、「あるむ」のように規格外の要素の多い作業所に対しても、 他の自治体に比して手厚い補助をしていただいています。(もちろん、上を見ればキリはありませんが…)しかし、「法外組織」であり、 「補助金」といういわば不安定な財政援助であることは、例えば、市の施策が変化する(税収が落ち込むだけでなく、 端的には福祉に理解の乏しい首長が当選するとか、実務担当者が配転で交替するとかも大きな要因です。)ことによって、 補助金がバッサリ切られるということにもなりかねません。そうした意味では作業所の側からの不断の努力と行政への働きかけも不可欠です。 神奈川県の場合、隣の「有名」知事とは異なりしっかりした考えを持っています。そして大和市の市長も類を見ないくらい福祉に力を注いでいます。

 大和市の場合、市内10ヶ所の作業所によって市作連(大和市地域作業所連絡会)が結成され、 地域福祉の一翼を協力して担う体制が形成され、行政との連携も着実に前進しています。 行政もまた、職員給与の安定・確立や、老朽化したり手狭になった作業所に対して「公設民営」「借り上げ」方式として、 新しく土地の手当てから上物の建築を行い、作業所に「貸与」するといった他自治体と比較して「進んだ」施策を実行しています。 法人傘下の作業所を除いて、現在、純粋に民間家屋を借りて、作業所を運営しているのは「あるむ」だけになっています。 (う〜ん、家賃だけでも全額補助にして貰えれば嬉しいですね。)
 とはいえ、作業所は「法人格」を持たない個人の「零細企業」状態であり、事業の継続性も含め、 福祉事業として極めて不安定な存在であることは否めません。